伝えたいこと

心臓を貫かれて「言及先の記事」からの伝えたいこと

 

虐待からおこる実態

 

とても良いレビューを書いて下さっていた方がいました。

www.saiusaruzzz.com

 

私は、この本の登場人物の「第四の子供」として登場できる過去あるので、自分の体験と重なってしまう為、この本を読むことが非常に危険な行為となってしまうので、言及させて頂く中で伝えさせて下さい。

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海外の映画などでは、この本のように虐待の影響による人格の異常性または不可思議な症状を持つ人物として取り上げられている作品は実は多いのです。

私は自分が同じ経験を持っていることで、同じ闇を抱えた人物がどのように描かれているのか、そこに何かヒントがあるのではないかと、探る思いで観ることがありますが、解決となるヒントは見つかりません。

やはり観せるために作られているストーリーですから、その虐待の根本となる原因には触れていないのです。

今回は、言及先の方が取り上げれたことで 心臓を貫かれて〈上〉 (文春文庫) を初めて知りました。

村上春樹氏が訳されていることで、手に取られた方も多いのではと思う時に、どうしても伝えたい思いがあります。

言及先の方は、

「読み始めから怖いと感じた」と言っています。

そして

「堪え難い恐怖の中で・・・」と想像して下さっています。

しかし、実態は「耐え難い恐怖」ではなく「耐えられない恐怖」なのです。

私たちは、どんなに怖ろしいホラー映画やスリラー映画を見ても「耐えられる範囲」でしかないのです。

では、耐えられない恐怖が襲うとはどう言う状態なのか。

コップを思い浮かべて下さい。このコップに入る水の量が耐えられる範囲になります。

私たちはストレスや負担をこのコップの中で調整しています。コップから水が溢れてしまわないように 水=負担(ストレス)なので水の量(ストレス)が多くなると、何らかの方法でストレス発散し、水の量を減らしながら調整して生きています。

耐えられない恐怖は、このコップにとんでもない量の水が襲った状態なのです。

耐えられる感情を超えた凄まじく大きな感情に人は耐えることが出来ないのです。

耐えられない感情に襲われたとき、生き残るために人間は持っている防御本能を使うことになるのです。

生き残るため、耐えらえない感情を自分の意識から切り離してしまう現象がおきます。

これは人間が持っている防御本能です。恐怖や苦しみを切り離すことによって生き残ろうとするのです。

しかし、防御本能を使ったことで、心は破綻してしまうのです。

 

この防御反応の実態は「解離」という現象です。

私たちは、何気無い日常でこの防御本能を持っていることを知ることができます。

それは、読書に夢中になっている時に声をかけれても気がつかない。長距離の運転で、ふと「ああ、もうこんな所まできたのか」とか、授業の終わりを知らせるチャイムに我に返ったり。

多くの人が知らないだけで「解離」は防御本能として備わっている本能で、決して特別なものではないのです。

もし、ここで「は?解離?普通じゃないら?」とでも、文句を言うなら「じゃあ、あなたがネットやゲームに夢中になっている時に声をかけれても聞こえていないのは何なんだ!」と言い返しますよ。

草食動物が肉食動物に襲われたときに、草食動物は「解離」をおこし

生きたまま食べられる恐怖と痛みを切り離すと言われています。そして、難を逃れれたなら、また普通の生活に戻って行くそうです。

 

人間も、もともと持っている本能ですから「解離」をおこしても、その後の人生が安全で安心なものであるなら、自然と治癒していくものです。

しかし、複雑な精神構造を持つ動物ゆえに、安心・安全が確保されない状態のままだと治癒されることなく持ち続けてしまう人もいるのです。

 

登場人物の フランク、ゲイリー、ゲイレン の兄弟も心の傷が治癒することなく生きなければならなかった結果ではなかったのだろうかと思うのです。

 

ゲイリーの言葉と現実の矛盾

 

解離を起こしている状態は、本来の自分が小さな存在でしかありません。魂を売り渡したかのように虐待者を言いなりとなる、それは支配とも言えます。

自分本来の心が切り離されている状態は、もはや抜け殻のような状態です。

そして抜け殻の心にこの虐待者の感情や行動を取り込んでしまうことになるのです。

それを印象づけている内容に

ゲイリーはある日、こんなことをマイケルに語った。

「もし周りの奴らがお前に暴力を振るってきても、決して抵抗しないでくれ。抵抗すれば、お前は奴らに殺されてしまう。だから約束してくれ。どんな目に合っても、決して抵抗しないと」

ゲイリーが涙すら浮かべてそう語るので、マイケルは「抵抗しない」と約束をした。

 

後にマイケルは、これはゲイリーが自分の家庭内で生きる術だったんだ、と出てくるようですが、

注目してほしいのは、マイケルに対して涙を浮かべて訴えているのです。

本書を読んでいないので、何を訴えたかったかは不明ですが、殺人を犯す人間が誰かのために涙を浮かべて訴えるものなのでしょうか?

ここには、ゲイリー本来のお人柄が見えているように思います。

 

ゲイリーは中学生のころから非行を繰り返し、教師も手のつけられない生徒の一人だった。彼の余りの素行のひどさに実際に殴るか、殴ると脅して、父フランクに文句を言われた教師がいる。

そのときのゲイリーはまったく反省する様子もなく、教師の言葉が耳に届いている様子もなかった。

しかし彼が殺人を犯し収監されていたときに「この教師こそ自分が人生で唯一尊敬している教師であり、人生で唯一あのときあの人にだけ助けを求めていた。ただ、あのころの自分の態度では先生がそれに気付かないのは無理もないし、もちろん先生は何も悪くはない」

ということを語ったと聞いて、その教師は天地がひっくり返るほど驚いたというエピソードが出てくる。

 

このエピソードから、非行を繰り返す中で教師かゲイリーのどちらが殴る・蹴るの暴力に出たのかははっきりしませんが、どちらにせよ、そこまでの酷い素行の悪さがあったことは事実、しかし教師の注意は耳に入らずの無反応ぶりである。

 

その後「この教師を唯一尊敬できる人であった。気がつかないのは無理はないし、先生は悪くない」と話している。

この矛盾にゲイリーの心が割れていることに気がつくのだが・・・

ゲイリーの素直なお人柄を感じるのは私だけであろうか・・・

 

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ゲイリーが死刑を望んだ理由

 

これは私の憶測にすぎないが、ゲイリーの心が割れてしまっていたのなら、ゲイリーの心には本来の自分、虐待者の父親を取り込んだ怖ろしい自分、これからの自分がバラバラの状態で存在することになる。

バラバラに存在することで、どの自分が本来の自分で、どの考えが本来の自分のものなのか、そしてどの部分が呪われた自分のか、自分では分けて自分を感じることができないのである。

そんな実態のつかめない自分にゲイリーは疲れ、自分の人生を閉じようと思ったのではないだろうか。

 

同じ兄弟なのに生き方が別れた理由

 

この本とは関係なく、普段の生活で親戚に素行悪い人が出た場合、家族に問題を起こす子供がいた場合などに「同じ兄弟なのに、何故なのだろう?」と疑問を持つ人がいる。

大概が、親の関わりが違うからなのか、と言う辺りへ持っていく人が多い。

私もこの疑問には、長いこと考えさせられてきた。何故なら「酷い虐待環境で育っていながら私はとても良い人なのだ」

周りからも私の生育歴を知ると「どうしてそんな良い人になったのか」と不思議がられる。

では、何が「歪んだ人間」と「良い人」を分けているのか?

簡単なことである。自分に対し努力をしたか、しないかだけのことである。

 

そもそも本書のように殺人までの経過がなくても、この日本だけでどれだけの「虐待」が存在しているか。

私が特別に良い人になったわけでなく「虐待環境を生き延び、同じように良い人」に育って暮らしている人はいくらでもいる。聞いても楽しくない虐待の話などしないだけのことである。

ですから「同じ兄弟なのに」と言った疑問に答えるなら、同じ兄弟でも別々の人間であり、その受け取り方感じ方はその人それぞれ。

そしてその後の人生で自分をどう見つめ、どう育てたか、の違いではないでしょうか。

 

虐待者(加害者)も被害者も実は、同じ被害者のなのです。

虐待者の冷酷でおぞましいその変質性は、自分をみつめ自分を育てることから逃げた果ての姿なのです。

環境には同情しますが、そこからの自分の人生は、どこかで自分の力によって修正するしなければいけないと私は思います。

本の内容ほど酷くなくても、私たちは大なり小なり抱えているものはあると思います。

自分から逃げてしまってはいけないと思うのです。

 

最後に

 

小さい息子はスクールカウンセリングも利用しています。担当の心理士さんが「解離のあるお子さんは多く、何の罪の意識もなく万引きを繰り返す」と現状に胸を痛めていました。

「何の罪の意識もなく・・・」万引きをする生徒の心には解離がおこった事実があり、抜け殻の自分が万引きをしてしまうのです。本人は記憶だけはありますが、どうして万引きをしてしまうのかは、抜け殻の自分=感じられない から自分では理解できないのです。

もし、これが皆さんだったら、どんな思いになりますか?

何も感じられないのに万引きをしている、どんなに怒られても、万引きをする理由がわからない。

この生徒さんへ与えるものは、怒ることではなく、愛情と安心と安全なのです。

親へ「あなたが、子供さんに何かしらの耐えられない感情を与えたのですよ!」などと言おうものなら親は猛反撃に出てくるだけで何の解決にもなりません。

「叱る」ことが「しつけ」だと思っている日本では、子供にとっての家庭は、一歩間違えばそこは戦場になる不安定な場所なのです。

 

 

心臓を貫かれて〈上〉 (文春文庫)

心臓を貫かれて〈上〉 (文春文庫)

心臓を貫かれて〈下〉 (文春文庫)

心臓を貫かれて〈下〉 (文春文庫)

日本においては、残酷な犯罪がおこっても犯人の生い立ちを突き詰めるて公開されることがありません。

遠い世界のお話でなく、もう身近な問題として考えてみるのに役立つ本だと思います。

親から自分へ流れたきた泥水を、自分のところで止め、そして少しでもキレイな水として次の世代へ流していくことが大切ではないでしょうか。

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